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留学記「大学院をミシガンで」

10月 < 2000年11月 > 12月


  • 2000−11−1(水)
     なんと、もう11月だ。やぃや、はぁいぇこど、おえ。おらふぁおらふぁ。(実家のあたりの方言です。意味は推測してください。)
     ちょっと前に「もう学期の半分だ…」なんて思ったのに、もう3分の2が終わろうとしている。今学期はTAの仕事がけっこう楽だし、2科目しか履修してないので、けっこういい感じに学ぶべきことを習得していると思う。去年の秋学期なんかは、とにかくサバイバルすることに必死で、「習得」するという感じじゃなかった。ずっと前にも書いたけど、「適量の負荷」というのは存在するのであって、あまりにやらされる量が多すぎると、得るものは逆に減ってしまうと思う。特に、とにかく暗記すればいいような種類の勉強と違って、我々がやってるのは、考えて考えて考えまくる勉強なのだから。だから睡眠も気分転換も必要だ。
     …という正当化のもとに、今夜は同級生とバスケットをして遊んだ。あー、たぶん一年ぶりくらい。シュートが入らないし、ディフェンスでも身体が横に動かなくて脚がもつれて、すぐに抜かれてしまう。困ったもんだ。体力が落ちるってのは悲しいなぁ。どんな職業をしていようとも体力だけは全ての人間の必須項目だ、というのが僕の持論なんだけど。

  • 2000−11−2(木)
     「政治制度と公共選択」の授業、今学期の初めころは毎回眠くなってしまってたのだが、最近はそうでもなかった。しかし今日は猛烈な睡魔に襲われた。
     その前に食べ放題の店で昼飯を食べて満腹になってたせいもあったのだろう、どうしても耐えられない眠さ。8人しかいないクラスなので目立つし、なんとか舟をこがないように、と必死だったが、どうしても意識が飛んで頭がグラグラ揺れる。
     ノートに落書きするといいという話を聞いたことがあったのを思い出して、なんか書いてみた。「パーマン」のアニメ主題歌の歌詞を思い出して書いたりとか、過去10回くらいのアメリカ大統領選挙の勝者を順番に書き出したりとか。それでも一時しのぎであって、眠気がとれるわけではない。落書きをしつつもまぶたが閉じたりして、「遠くで呼んでる声がする、来てよパ」で1行が終わってたりとか。
     はるばるアメリカまで来て何をやってるんだろうなぁ、自分。

  • 2000−11−4(土)
     たまに、研究室の近くにある寮の食堂に食べにいくことがある。そこは学部生用の寮で、食堂は食べ放題式になっている。昼は$5.40、夜は$6.40で、好きなだけ食べられるので、たまに栄養補給の目的で食べにいくのである。不足しがちな野菜なんかを、そのときは馬か牛のようにワシワシと食いまくる。
     今日の夕飯はそこ。韓国人の同級生と2人で行って食べていたのだが、突然、黄色いトレーナーを着た女性が僕らのテーブルに来て、「Hi」と言って握手の手を差し出してきた。何だ?と一瞬思った。女性が続けて言う。「私はダイアン・バイラム。私は…」
     「!!」
     その人は、3日後に迫った選挙で連邦下院に立候補してる候補者なのだ。名前はテレビのコマーシャルで耳にタコができるほどに聞いてる。しかも、ここミシガン州第8区は大接戦になってるとかで注目を集めてるらしいのだ。その候補者が、ここに。
     僕はビックリして表情が固まったまま握手してもらった。で、やっと出た声で、「あ、僕らは選挙権ないんですよ」と言った。彼女は、「それはあなたたちが外国人学生だから?まあいいわ。挨拶をしたということでね。」とか何とかたぶんそんな感じのことを言って微笑んで、別のテーブルに移って行った。食堂中のすべてのテーブルをまわってるようだった。
     なーんか、びっくり。選挙の候補者って、もっとたくさんの人にいつも囲まれてるイメージがあったけど、彼女は1人で学生たちと握手して食堂内をまわってた。で、学生たちも珍しがってる感じじゃなくて、食堂は別に騒然とせず、いつもと同じ雰囲気。ふーん。
     下院は選挙区も狭いから、たぶんここの選挙区では、MSUの学生の票って重要なんだろう。しかも、まだ態度を決めてない有権者って学生に多そうだから、最終盤の今、寮の食堂まわりをするってのはいい戦略なのかもしれない。面白〜い。

  • 2000−11−6(月)
     いよいよ明日は大統領選。ドキドキワクワク。
     今学期に書く研究論文のためのデータを入力したり整理したりしてたのだが、ある程度そろったので、面白半分に統計ソフトを走らせてみた。そしたら、出て欲しいような結果がバッチリ出てくれた!
     もちろん、まだ統制変数を入れてないので喜ぶには早いが、それでも、いい方向に向いてると言えそうだ。係数の符号の向きは仮説通りで、p値は0.000である。期待が膨らむ。
     来年9月のアメリカ政治学会の発表申し込みがたしか来週あたりで、この論文で応募するつもりなんだけど、統計の結果が出ていれば有利になりそうだ。こないだ落選した中西部政治学会の雪辱をここで!
     いや、でも、こんなに期待しててダメだったらショックが大きすぎるから、用心しておこう。明日の朝に教授と会う約束で、これを見せてコメントをもらう。さて。

  • 2000−11−7(火)
     朝9時半に先生の研究室に行ったのだが、いない。この時間に来いって言われてたのに〜。
     10分おきくらいに行ってみたけど、結局会えなかった。
     今日は選挙の日で、まわりの院生たちも盛り上がっている。ゴアのTシャツを着てる先輩はいるし、廊下にはブッシュへの投票を呼びかけるビラが貼ってあったり。昼飯を食いに外に出たときも、キャンパス中のいたるところで、地面にチョークでいろいろ選挙関係のことが書いてあるのを見た。日本の大学とはすごい違いだ。
     午後5時からの授業は、今朝会えなかった先生のクラス。でも、午後の間に考え直して、もうちょっと進めてから見せることにして、金曜に会う約束をした。そのクラスは正式には7:50までだが、だいたいいつも7:30ころに終わる。クラスメートの1人が先生に「開票速報を見たいから今日は早く終わりましょう」と言ったら、「ああ、そのつもりだ。7時過ぎには終わるぞ」と先生。で、実際は6:45ころに終わった。教室を出るとき、先生に「アメリカで選挙を見るのは初めてだから興奮してるんですよ」と言ったら、「ENJOY!」と言われた。
     自転車を飛ばして寮に帰って、CNNをつけた。開票速報をやってるテレビ局は7〜8個くらいあるらしいけど、昼間、友達に「どの局がいいの?」と訊いたら、「CNNは尻を蹴るぜ!(良いという意味)」と言われたので。
     いま、東部時間の午後8:50(日本時間午前10:50)。ゴアがかなり優勢。たぶんゴアの勝ちじゃないかな。

  • 2000−11−8(水)の早朝
     とんでもないことになってきた。
     各メディアは開票開始早々に、フロリダ州をゴアが獲得したと報じた。そこに、激戦だったミシガン・ペンシルベニアをもゴアが取ったというニュースが続いたので、ゴアの勝利は固いと見られた。
     その後、たしか夜10時前(東部時間)くらいに、フロリダ州の「当確」が撤回された。他の州の結果はある程度予想の範囲内で、午前1時くらいには、「フロリダで勝った方が勝つ」状態になった。
     そのままCNNを見ていた。そして午前2時15分ころ、画面に突然、「ブッシュ勝利」と出た。歓喜に湧くブッシュ支持者の集会の様子が映し出された。そして僕は寝た。
     朝5時20分ころ、目が覚めたのでテレビをつけた。そしたら、様子がおかしい。しばらく見ていたら事情がわかった。フロリダがあまりにも接戦になったので、「当確」が再び取り消されたのだ。不在者投票と、在外軍人投票を開けてみないとわからないという。現在、午前6時10分。

  • 2000−11−9(木)
     いやはや、アメリカの政治がこんなに混乱することになるとは、思いも及ばなかった。でも、ここんとこ異常に忙しくて、ニュースを丹念にチェックする暇がない。今夜の夕飯はカップラーメン一個。ぐひえ。

  • 2000−11−10(金)
     金曜はいつもは授業がないんだけど、「中級計量経済学」のクラスが来週と再来週の2回分キャンセルになるので、その補講があった。で、クラスの前に、自分の研究論文のことで先生と話した。統計分析をやっていて、けっこういいと思われる結果が出ていたので、それを見せた。ちょっと説明したら、先生が一言、「ダメ。」
     僕が気づかなかった欠陥を先生は瞬時に発見した。詳しく言うと、ロジット・モデルを使っていたのだが、その従属変数の約95%がゼロであって、それではダメだとのこと。知らなかったのだけど(っていうか、習ったけど忘れたのか)、ロジットを使うときは従属変数の0と1の比は5:5くらいが望ましく、悪くても7:3(3:7)くらいは必要なのだそうだ。
     ヘナヘナと身体の力が抜けた。期待していただけに、ショックだった。昨日あたり、統制変数をいくつか入れてみて、それでもいい結果が出ていたし、理論の面でも重要な研究だと自分で思ってるものだ。甘い期待はやめようと思いつつも、実はニヤニヤしていたのだ。来年9月のアメリカ政治学会の発表申し込み〆切が来週の水曜で、これを出すつもりでいたのだ。それなのに、それなのに・・・。
     で、その後の補講も、内容が強烈に難しく、頭の中で「ひえーっ」と叫び続けの1時間30分を過ごした。終わってから、教室まで宅配してもらったピザ(先生のおごり)を食べながらみんなで談笑したのだが、僕は、顔で笑って心は涙。
     NGになった僕のデータだけど、直す方法を先生が教えてくれたので、それに沿ってデータを修正してみる。しかし、猛烈に手間のかかる作業で、しかも、その修正をしてもどんな結果が出るのかはわからない。でもとりあえずやってみるしかない。

  • 2000−11−13(月)
     忙しくてなかなか更新できません。わざわざ訪問してくださってる方々には申し訳ありません。
     今夜は2時まで研究室篭り。今は寮の自室@2:30AM。でも何時に寝れるかわからない・・・。

  • 2000−11−15(水)
     金曜に書いた、ゼロが異常に多いダミー変数を従属変数にする場合について、掲示板のほうに頂いた情報をもとに、そういうケースに対応した新しいモデルを使って分析し直してみた。で、ほとんど変わらない結果がでた。喜んでいいのか、それともプログラムをちゃんと使ってないのか、よく分からない。とりあえず、その先生にメールで報告した(しばらく出張中なので、何かあったらメールで連絡するように言われていた)。今のところまだ返事はない。
     来年9月のアメリカ政治学会の年次大会(会場はサンフランシスコ!)の発表申し込みが今日〆切で、とりあえず今やってるその研究のことを書いて送った。9ヶ月半も先の学会に申し込むって凄い話だ。採用かどうかは2月ころにメールで通知されるそうだ。「その審査係はフロリダ州の開票係くらいに仕事が速いな」と友達と言って笑った。
     そうそう、選挙の話。大接戦のフロリダ州で、票を手作業で再集計するということに、ブッシュ陣営は「手作業では不正が入る」として反対し、差し止め訴訟まで起こしたわけだが、今日知った話では、そのブッシュが知事を務めるテキサス州で1997年に(もちろん彼の任期中)、「僅差の選挙では手作業での再集計をすることが望ましい」とする州法が成立してるのだそうだ(もちろん知事が署名した)。なんだそりゃ。ギャハハハハ。グヘヘヘヘ。はらわたがよじれる。

  • 2000−11−20(月)
     降りしきる雪。いま、月曜の午前9時半すぎ。外の気温は零下4度。体感温度は零下18度だそうだ。あー、外に出たくない。でも、行かなきゃ。
     昨夜からワクワクしていた日本の政局だが、朝起きてみたら一転、拍子抜けの展開になっていた。むちゃくちゃ混迷すれば面白かったのになー。でも、そうなったらニュースに釘づけで勉強どころじゃなくなるか。
     あと4週間で学期末。宿題が数個と、ペーパー&発表が2つ、さらに研究論文が1つ。それとTAの仕事がいくつか入ってくるかな。大学院3学期目となり、だんだん要領がよくなってきてて、去年の今ごろみたいに、「終わるだろうか、生き残れるだろうか」と焦るような気持ちはなく、一応間に合う(間に合わせられる)感触はある。でも、「なんとかなる」とは絶対に思わないことにしている。その言葉は自分に甘く、自分の気持ちを緩めるものであり、「困難なことに挑む強い人間」ならばそんなセリフは口にしない、というのが僕の持論である。

  • 2000−11−25(土)
     感謝祭のため、今週は木・金がお休みで、長い週末。といっても、普段から週休5日なのが週休6日になっても大した違いはない。
     去年は感謝祭の間もずっと勉強してた気がするけど、今年は、ひょんなことから普通のアメリカ人家庭に招かれて、七面鳥などなどの夕食を堪能してきた。寮の食堂で食うと全然旨くないマッシュトポテトとかグレイビー(肉汁)とかが、あんなに旨いとは知らなかった。七面鳥も超美味で、腹が張り裂けるほどに食いまくった。
     昨日そこから帰ってきて、しかしなんだかんだで勉強せず、今日になった。火曜にペーパー提出&発表があるのだが、まだ文献を読み始めていないというドタバタである。真剣にやばい!

  • 2000−11−27(月)
     米国議会研究の大御所であるR教授による「政治制度と公共選択」のクラスは、毎回、当番の学生が指定文献を批判的に検討する5ページほどのペーパーを書いてきて全員に配布し、口頭で発表し、それについて話し合うという形式で行われる。学生は8人で、全員が4回ずつ発表することになっている。明日は僕の3回目の番で、いつものように土壇場で慌てることになってしまった。
     僕が担当するのは、Robert Bates (1990) "Macropolitical Economy in the Field of Development"と、同 (1997) "Comparative Politics and Rational Choice: A Review Essay"の2本。後者は読んだことあるし、前者もぜひ読みたいと思っていたので、この日の担当に立候補したのである。実際に面白い文献なのだが、「批判的に検討」しろと言われると困ってしまう。どっちの論文も、他人の研究のレビューが中心になっているのだが、元になってるのを読まずにそのレビューを批判するなんて無茶だし、そうすると、Batesのレビューの視点(前者では"Political Economy"アプローチを擁護し、後者では比較政治学において蓄積的知識を追求すること(「理論はdiscardされずにrejectされねばならない」とのこと)を主張している)を切らねばならないことになる。それもなんだか大きすぎて、そのために読まねばならないものも多そうで、ハー、明日までに何ができるだろう…。

  • 2000−11−29(水)
     昨日のペーパー&発表は、30分前に完成、15分前に印刷終了という綱渡りを演じることになってしまった。前日は研究室で徹夜して、「授業の前に1時間でいいから寝たいなー」と思ってたけどそれもかなわず。こんなドタバタになった理由の一つは僕の勘違い。27日のとこに書いた2本の他に、もう2本の論文を扱わねばならなかったのである。それに気づいたのが前日の夕方。目の前が真っ暗になった。残り10時間になってそんな・・・、という感じ。そんなわけで、その2本についてはかなり手抜きの批評を書いた。
     でも、発表自体は一応問題なく乗りきった。ペーパーにどんな評価がついてくるかは分からないけど。
     で、そのクラスの後、5時から8時近くまで「中級計量経済学」の授業。疲れのせいもあってか、ほとんど理解できず、ひたすらノートをとるばかり。気は滅入るばかり。
     で、昨夜は11時ころから寝て、朝ちょっと起きてまた寝て、昼近くまで寝てた。しかし今日もやることは山ほどあるのだ。なんか頭も痛いし、う〜、これが学期末ってやつかい。


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