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留学記「大学院をミシガンで」

11月 < 2000年12月 > 1月


  • 2000−12−2(土)
     あと2週間で学期末。しかし、「中級計量経済学」のほうは、8日までに全部提出しないとダメということになったので、"INCOMPLETE"(「不完了」?)することにした。こうすると成績が来学期の中間日まで保留になる。ペーパーは冬休み中に書いて先生に郵送して評価してもらうことにした。他の2人もそうするそうで、クラスの全員が"INCOMPLETE"することに。
     混迷する大統領選だが、そろそろ決まりそうな気配になってきた。それにしても、歴史に残る選挙になりそうである。
     思うのだが、この混乱が起きた理由の最大のものは、投票用紙とか投票方法とかではなくて、単に、極端な大接戦になったから、であろう。フロリダ州の結果がもっと大差になっていたら、「えくぼ票」とか「バタフライ式」など、全く問題にならなかったに違いないのだ。
     こないだ発表されたフロリダ州の両候補の得票差は、州の投票総数の0.01%弱である。どの先進国でも普通は1%ほどの無効票はでるそうであり、それを考えれば、このような異様な僅差になった場合、どの国であっても再集計とか告訴合戦になりそうではないか。もちろん、「アメリカだから」の要因はあるけど(投票方式が州や郡によって異なること、司法制度のことなど)、これを2000年にアメリカで起きた一回きりの問題として片付けることはできないように思える。

  • 2000−12−6(水)
     一年のこの時期は、大学院は就職関係で忙しい時期である。来年度からの新しい教官の採用のために、全米各地からうちに面接にやってくるし、うちの大学院の先輩も全米各地の大学に面接に飛んで行く。
     現在うちの政治学部では2つの空きポストを公募してるらしく、先週と今週とで10人くらいの志願者が面接に来ているようだ。今日は西海岸の名門S大学の大学院生が来ていて、正午に研究発表会があったので見に行った。内容は難しくて理解できなかったが、配られた資料によると、僕よりもたった一歳年上の人だそうだ。ほえー。
     うちの大学院の先輩も、面接にいろいろ行ってるようだ。大学院生がどのレベルの大学に就職したかによってPhDプログラムの評価が大きく左右されるので、送り込む側も真剣である。研究発表の予行練習をやって、教官が細かく指導する。「OHPの使い方をこうしろ」とか「君が受験するF大学にはG教授がいて、こういう質問をしてきそうだから準備しておけ」とか、それはそれは一生懸命。
     僕もうまくいけば3年後にこんなことしてるのかなぁ。なんだか想像つかない。

  • 2000−12−9(土)
     昨夜は、毎年恒例の政治学部のホリデー・パーティーの日。教官と院生を合わせて40人くらいも来てたかな?でも、日本の居酒屋みたいに座敷になっていればもっと席の移動がしやすいんだけど、ちゃんとイスとテーブルになってると、場所を動きにくくて、どうも最初に座った席の近くの人達とずっと話す感じになってしまう。なんか、ちょっとね。
     去年と比べて、今年はもっと人を知ってるので、気楽に楽しめた。相変わらず英語の会話にはついていけなかったりするけど、ちょっとずつはマシになってきてるかな?5時から始まって、8時ころには10人くらいしか残ってなかった。いつも思うけど、健康的な人たちだなぁ。僕は最後まで残ってたけど、それでも9時過ぎ。
     そうそう、今日は卒業式らしい。アメリカの大学は学期ごとに卒業式があるんだけど、今学期はまだ終わってないのだ。今日卒業式をやっても、来週の最終試験で失敗したら卒業取り消しになるって人も多いんだろうな。単位がとれるかギリギリの人達にとっては、卒業を祝うって感じでもないんじゃないかね。

  • 2000−12−15(金)
     いつものように、最後に焦るクセ。昨日が「政治制度と公共選択」の最後のクラスで、僕もペーパー提出&発表することになっていた。題材は、Green&Shapiro(1994), Pathologies of Rational Choice Theoryの6〜8章。その3日前から取りかかっていたのだが、なかなか読むのが進まなくて、ところどころ飛ばし読みしながら、なんとか一通り読み終わったのが前日の深夜。さらに、この本への批判エッセイを数本とそれへの著者からの再反論が、そのクラスのもう一つの題材になっていて、自分の担当でないとはいっても、それを読まないで書くわけにもいかないし、それらをザーッと読んだり、書くことを考えたりして、実際に自分のペーパーを書き始めたのは朝の5時ころ(クラスは午後3時)。あー、今学期何回目の徹夜だろー、なんて思いながら、カフェイン補給を絶やさないようにしながら、頻繁に冷水で顔を洗いながら、とにかく書く。いや、たった5ページなんだけど。何を書いていいのかなかなかまとまらないし、頭も回ってない気がしたし。
     昼過ぎにやっと書き終わって、研究室から寮に帰った。ここ数日のドカ雪で自転車には乗れないし、歩道も雪で歩きにくいし、疲れる。で、適当に昼飯を食いながらペーパーを印刷して、30分だけ仮眠。2:30に起きて、身支度。再び雪を踏みしめながら、今学期最後のクラスへ。
     発表は、まあいつも通り普通に乗りきった。先生も細かいことを指摘する感じの人ではないし。で、他に2人の発表もあって、終わったのは2時間15分後。徹夜開けの身にはけっこう辛かった。とりあえず、これで今学期は終了。今日から冬休み。

  • 2000−12−16(土)の朝
     視力の低下に気づいたのは今年の2月か3月ころだったと思うが、ここ最近、いよいよどうしようもないところまで眼が悪くなってしまった。黒板やOHPの字がよく見えないし、それを見るために目を細めたりとかやってると、目がどうしようもなく疲れてしまう。テレビでスポーツ中継なんかを見てても、得点の表示が読めなくて不便な思いをしたり。
     なんというか、子供のころから、目がいいことは自慢の一つだったのだ。なにより便利だし、金もかからないし、「田舎育ちの誇り」みたいな気分もあったりして(実際は田舎にも目の悪い子供は多いし、関係ないとは思うけど)。それが、なんと26歳にして、近視になってしまった。このまま眼鏡なしで一生を過ごしたいと思ってたんだけど、ついに限界まで来たようだ。もっと目をいたわりながら勉強していれば…、と悔やまれてならない。でも、もう取り返しがつかない。
     で、昨日、大学の保健センターに行って、目の検査をしてもらった($46!!)。僕にとって、子供のころに年に一回、「上、下、右」とかやったもの以上の検査を受けるのは初めてだったので、「へー、こんなに細かくやるものかー」とビックリした。僕の勝手な想像では、何種類かの眼鏡をかけてみて、「一番よく見えるのを選びなさい」とかいう程度のものかと思ってたんだけど、考えてみたらそんなわけないよね。いろんな方向から目に光を当てたり、100回くらいも「どっちがよく見えるか」言わされたり、初体験で面白かったけど、やっぱり疲れた。
     結果。日本とアメリカでは視力の単位が違うようで、どのくらいかピンとこないんだけど、右が−1.00、左が−1.25だった。友人の話では日本の0.6くらいじゃないかとのこと。そんなに悪いわけじゃないようだ。
     眼鏡を買ったら写真をここで公開しまっす。

  • 2000−12−17(日)
     朝起きたら新しい雪が10cmほど積もってた。こないだは一日で30cm以上積もったし、12月としては記録的な大雪だそうだ。故郷の新潟でも、こんな雪が12月に降った記憶はない。
     さて、冬休みに入ったとはいえ、インコンプリートのペーパーを抱えているので、完全に休みというわけではない。今日も研究室に行って、データをいじくったりしてた。でも、学期中のような異常な生活を送っていては、新学期まで疲れを持ち越すことになるので、十分な休養と気分転換をしつつペーパーに取り組むつもりである。で、図書館から『芥川龍之介集』を借りてきた(もちろん日本語の)。夜はビールでも飲んでノンビリと読書しようか、って感じ。

     ところで、5万ヒット達成しました。いつもご愛読ありがとうございます!

  • 2000−12−19(火)
     とうとう眼鏡を購入。小学生のときから眼鏡を使ってる友人がつきあってくれて、昨日と今日で4軒も眼鏡屋をまわった。最初のうちは、いろいろかけてみても何が違うのかわからないくらいだったけど、3軒目くらいからやっと眼鏡に対する自分の好みができてきた。
     しかし、問題は僕の顔の幅が広いこと。サイズが合わないともちろんダメだけど、そうするとデザインの選択の余地が狭まってしまう。僕は足もデカいのだが、日本で靴を買うときは同じ苦しみを味わう。28cm以上の靴は日本ではなかなか品揃えが少ないわけで。アメリカに来たら、足のサイズは問題なくなった。28cmなんてアメリカでは普通らしい。今までそれを喜んでいたんだけど、僕の頭のデカさについては、アメリカでもけっこうなものらしい。
     それでも、なかなかいいものが見つかった。4軒目に行った店は、デザイナーブランドとかじゃない安いフレームをたくさん揃えていて、他の店よりも断然安く、断然気に入った。その店で、フレームもレンズも2年間有効の保険も含めて、$160。他の店だとフレームだけでこれより高かったりしたのに。
     紫外線カットと反射防止加工をするので出来上がりまで5日ほどかかるとのこと。そのうち写真を載せるのでご期待ください〜。

  • 2000−12−21(木)の朝
     ライオンはウサギを狩るときにも全力を尽くすという。ホントかどうかはさておき、それは素晴らしい態度だと思う。それは、スポーツの試合で、全然弱い相手に対してでも手を抜かずに真剣勝負すべきということに似ている(プロスポーツは別だけど)。どっちにしろ食べられてしまうウサギにとっては、ライオンが全力だろうが手抜きだろうが大した違いはないのかもしれないが、でも、これはウサギへの思いやりとかよりも、ライオン自身の生き方の問題である。自分の犠牲になるものに対して真摯な態度である、という生き方。そうやって生きる。
     それと関連して、我々は動物の肉を食べるとき、自分のエサになる生命に対しての感謝と畏敬の気持ちを忘れてはいけないと思う(植物に対しても同じこと)。自分は牛肉を食べるけど、牛が屠殺されるところを見るのは怖い、嫌だ、と思う人は多いと思うが、それはひどく失礼な話しだ。食べるという行為を自分がとる以上、その行為の持つ含意をすべて引きうける覚悟がなくてはならない。他者の生命の犠牲のもとに自分の生存があるという事実、それに対してとるべき態度は、「肉を食べない」とかではなく、「犠牲になった命に対して恥じない生き方をする」、ということだと思う。
     世界には食べ物が無くて苦しんでいる人々がいる。一方、自分のまわりには食糧が溢れている。その現実の中でとりあえず自分は、「美味しく頂く」べきだと信じる。自分には「美味しく頂く責任」があるんだと思う。
     若くして命を落した人がいる。僕よりも若いのに。僕はその人との交流から多くを得たし、その人が作ってくれた場所に集った人々から多くを学んだ。感謝、そしてやっぱり、口惜しさ。本当に、生きて欲しい人だった。結局、僕は全てを自分の胸に収めて、強く、高く、生きてゆくしかない。その責任がある。そうする。合掌。

  • 2000−12−23(土)
     冬休みに入ってからずっと、インコンプリートのペーパー(12月2日の項参照)に取り組んでいるのだが、なかなか捗らない。年内完成を目指してたのだが、どうにもこうにも。今やってる部分の山を越えれば、後は一気に書くだけとなるのだが、どうなることやら。
     そんなこと言っておいて、ついつい関係ないことに夢中になってしまうのが僕のクセで、今日はなぜか中東戦争の歴史やイスラエルのことについて調べていた。けっこう意外だったのが、イスラエルの人口はたった576万人だということ(1996年)。これじゃ、香港の人口より少ないじゃないか。で、アメリカのユダヤ人人口が600万人とのことだから、それよりも少ないのだ。ほえー。
     あと、イスラエルのユダヤ人の中に、欧米系のユダヤ人とアジア・アフリカ系のユダヤ人との間に社会経済的に大きな格差があるとか、今はイスラエルの共通語になってるヘブライ語は、話し言葉としては遥か昔に死語になっていたのに、シオニズム以後に現代化して復活したのだとか、知らなかったことがいろいろ、とても興味深い。イスラエルって国も、いつか行ってみたいものだ。

  • 2000−12−24(日)
     眼鏡が出来たというので取りに行った。生まれて初めての眼鏡、かけてみたら…、なーんか、近くを見ると裸眼で見るより良くないし、あと、真っ直ぐ見てるときはいいけど、上下左右に目を動かすと頭がグワングワンとする。なんじゃこりゃ!?と文句がノドまで出かかったけど、ちょっと離れたとこを見るように言われて、見たら…!すごくクッキリ見えるのだ、これが! 眼鏡を取ったら全然ボヤけてしまって見えない字とかが、バリバリ見える。やぃや、おぇ。ひってすんげもんだにっか、これ。(実家のあたりの方言です。意味は推測してください。)
     今までボヤけて見えていたものがクッキリと見えるようになってみて、昔は全部がこういうふうに見えていたんだな〜、と思ったら、目が悪くなったことがまた悲しくなった。まあ、いまさらどうしようもないので受け入れるしかないんだけど。
     さて、今日は11時間も研究室(とその上の階にあるコンピューター室)にこもって勉強。何をやってたかというと、政治学を知らない人が見たら決して僕を政治学専攻とは思わないであろうような、テクニカルなこと。ダミー変数をロジットモデルで回帰分析する場合、サンプル数が小さいか、従属変数の0と1の比率が極端に偏っている場合、係数の推定値とそこから計算する確率の予測が不偏でなくなるそうである。で、KING&ZENGという2人が、その偏りを修正する"RELOGIT"というモデルを作った。僕が今やってる分析では、0が95%、1が5%という従属変数を使うので、このモデルが適当になる。修正した推定値はコンピューターが瞬時に計算してくれるので、こっちはハナクソをほじって待つ必要もないくらいに速いし楽である。しかし、コンピューターが人間に楽をさせてくれるのに対して、人間は人間に楽をさせてくれない。教授から僕への指令は、「両方のモデルがどうやって違った値を出すのか詳しく検討せよ」とのこと。ひえーん。そんなわけで、LOGITとRELOGITの2つが弾き出した推定値の違いを、自分で再現しようと試みたのである。文系人間の僕に頭痛を呼ぶような数式をちりばめたKING&ZENGの論文を亀のようなスピードで読んでゆき、計算手順を調べる。エクセルを使って計算しようかとちょっと思ったけど、ちょっと考えたら不可能だとわかった。そういえばSTATAで行列の計算ができるんだよなーと、STATAのマニュアルを読んで、行列の定義とか計算とかを初歩の初歩から勉強して、亀の歩みで黙々と計算、計算。…そして!!出たのである、完璧に、その値がっ!RELOGITのプログラムが一瞬で弾き出した推定値を、手動で再現することに成功したのである。誰もいないコンピューター室で飛びあがって、腕を振りまわして喜んだ。感動の嵐。(この実験用に使ったデータファイルとDOファイルを、興味ある方がいらしたらお送りします。メールください。数日かかるかもしれないけど。)
     クリスマスイブにこんなことをしてる人は珍しいと思うけど、いいのだ、これで。僕はクリスチャンじゃないし。

  • 2000−12−28(木)
     今日も研究室へ。同じ階に同僚たちの研究室が並んでいるのだが、さすがに今日なんかは誰もいない。みんな実家に帰ったりしてるのだ。しかし、一つ上の階に行ってみると、人が多い。そこは教授たちの研究室がある階で、こんなに年末押し迫ってても、多くの教授が出勤している。すごいもんだなぁ。
     年内に終わらす予定だった僕のペーパーは、結局終わらなかった。ちょうど区切りのいいとこまでやって、今年はここまで。

  • 2000−12−31(日)
     日本はもう元旦だけど、アメリカはまだ大晦日。えーと、今日で2000年が終わり。明日から21世紀。でも、アメリカ人のほとんどは今年からすでに21世紀と思ってるので、去年と違って今年は大して盛り上がっていない。実際、僕にもなんかピンとこない。日本にいたらもっと「世紀の変わり目」という感慨がジーンときてるのかもしれないけど。なんか残念。
     しかし、世界の人類のおそらく90%以上の人は2000年から21世紀だと思ってるのだろうことを考えると、いくらグリニッジ天文台が2001年からだと言ってても、何が本当かなんてことは簡単には言えないのかもしれない。結局は人間が決めることなんだし。
     まあどうでもいいや。
     ええと、今年はまあいろいろ、相変わらずハードコアに勉強漬けの一年で、盛り沢山の一年でした。学問のほうでは、自分の集中力のなさがいよいよ大問題になってきてるのと、先のほうにちょっと光明が見えそうな気もわずかにしてきてるのと、明暗両方の展望が存在してるという感じ。さて一年後にはどうなってることか。  来年もどうぞよろしくお願いします。 m(_ _)m


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