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留学記「大学院をミシガンで」

4月 < 2003年5月 > 6月


  • 2003−5−2(金)の午後
     学生たちの成績を大学本部に報告して、今学期の職務は全て終了。
     先学期までは、成績報告はマークシート式だったらしいのだが、今学期からは全てオンライン化された。大学のウェブサイト上の「教員メニュー」のところでログインすると、自分が今学期教えたクラスのリスト(僕の場合は一つ)が出て、それをクリックすると、そのクラスの学生名簿が出てくる。学生それぞれの名前の脇に、成績("4.0"から"0.0"までの8段階。うちの大学の成績評価はABC式ではない)をマウスクリックで選択できるようになってて、全員分をクリックして選択したら、一番下の「提出」ボタンを押す仕組み。また、スプレッドシートをアップロードする方法でもできるらしい。
     なんとまあ、凄いペーパーレス化だ。老教授たちから批判は出ないのだろうか??

     これで夏休みに入ったのだが、やることはいろいろある。あと一ヶ月弱で、ワシントン大学でのEITMプログラム(「理論的モデルの経験的含意」とでも訳すのだろうか?)が始まるので、それに備えていろいろ準備しなきゃいけない。授業のシラバスは既に送られてきていて、「セントルイス到着前に読んでおけ」と指定されてる文献がたくさんある。また、統計ソフトの「R」を使えるようになっておけ、との指示もあるので、これから一から勉強しなきゃいけない。
     この夏は、大学院入学以来はじめて、日本に帰らない夏になる。でも、このEITMプログラムでしっかり勉強して他参加者や教授陣との人脈を築くことは、今後の自分にとって非常に有益になるだろうから、頑張る。

  • 2003−5−3(土)の午前中 【33万アクセス到達しました】
     昨日も書いたように、6月に行くEITMプログラムは相当にハードになりそう。指定文献の一つである、DeGroot & Schervish (2002) Probability and Statistics, 3rd ed. を購入したのだが(高かった・涙)、けっこう難しそう。統計理論は、今までは実践的にデータ分析を走らせるのに必要なだけ知ってればいいや、程度に思っていたのだが、やはりこれ以上深く進むとなると、数理統計学を本格的にやらねばならないようだ。「1〜4、6〜8、11章を事前に読んで来い」って、それって3つ除いて全部じゃん!
     あー、道は険しそうだ。自分の信じる政治学の道筋がこっちであることは疑わないけど、でも、もともと数学が好きなわけでもない自分がこっちを行くのって、忍耐力が要るなー。

  • 2003−5−7(水)の夕方
     はるばるメキシコシティーから講師を招いての4日間連続セミナーが昨日から行われている。4日間・計10時間も時間が取られるのは嫌だな〜、と最初は思って、出ないつもりだったのだが、複数の教授に「出たほうがいいぞ」と勧められたので、初日の昨日出てみたら、これが非常に面白い。内容は空間理論を使った議会政治の分析で、アメリカの州政治と中南米諸国の分析に応用されていて、近いうちに本になって出版されるらしい。空間理論の論文は自分で読むとすぐ飽きてしまって進まないので、こうやってレクチャーを聴くのはとても効果的な学び方かもしれない。メキシコ人の教授だけどアメリカでPhDを取った人だからあまり訛りもなくて聴き易いし。
     そのセミナーに参加してるのは、教授3人とポスドク1人と院生7人。講師そっちのけで教授2人が議論を始めたりして、横で見ていると面白い。参加者全員がある程度のフォーマル理論の知識を持っているので、あまり的外れな質問や意見が出ないのもいい。
     アメリカの議会政治研究で培われた理論が中南米の大統領制諸国の分析に応用され、もっと大きな理論的枠組にまとめられているところが僕は特に気に入った。僕は常々、アメリカ政治研究と比較政治研究はもっと密接であるべきだと思っていたので。今日、講師を交えて数人で昼食に行ったので、そのときにそれを話したら、「その通りなんだ。アメリカ政治と比較政治は同じことをやっているんだから」と彼は非常に賛同してくれた。
     残りのあと2日間、非常に楽しみだ。

  • 2003−5−9(金)の午後
     4日間のセミナーは今日で終わり。研究発表はとても興味深かったし、それを聞きながら自分の研究テーマに関連したアイディアもいろいろ湧いてきた。
     でも今朝は8時半から開始だったので、早起きしなければならなかった。いつもなら8時半ころにやっと起き出すというのに!そのせいで、さっき床屋で散髪してもらってる間、ずっとウトウトしていた。

     あと、今朝のセミナーが終わった後で政治学部の大学院主任の教授が教えてくれたのだが、僕が来年度も引き続き財政援助を貰えることが決定したそうだ。まあ、ほぼ大丈夫とは言われていたのだが。僕は入学時に、「4年間は確実、5年目もたぶん大丈夫」という財政援助の条件をもらっていて、来年度は5年目なので、ちょっとだけ不安だったのだ。これで安心。来年も、たぶん授業を一科目教えて、その代わりに授業料免除+給料+健康保険などの給付を受けることになる。

  • 2003−5−10(土)の夜
     大ショックのニュース。うちのバスケチームの1年生、イラゼム・ローベックが、NBA入りすることを表明した。彼はスロベニアからの留学生で、シーズン終盤に大活躍を見せたので、2年生になる来シーズンでの急成長が期待されていたのだ。彼の離脱で、来シーズンのチーム構想は大きな影響を受ける。
     彼の場合、お父さんがヨーロッパでプロチームのGMをしていることもあり、もしNBAチームからお呼びがかからなくても、いつでもヨーロッパに帰ってプロになれる。実際、MSUへの留学を決める前にはヨーロッパのプロチームから誘われていたそうだし。
     あー、それにしてもショックだ。来年は全国優勝さえ狙えると期待していたのに、戦力の大幅ダウンは避けられない。

     これで、うちのバスケチームからは3年間で4人の中途離脱者が出たことになる。一昨年は、ジェイソン・リチャードソン(現NBAウォーリアーズ)とザック・ランドルフ(現NBAブレイザーズ)が抜け、去年はマーカス・テイラー(NBA入りに失敗して下位リーグに行った)が出ていった。あまり優秀な選手を入団させるとすぐにプロに行ってしまうので、最近の大学バスケのコーチたちはチーム作りに苦心しているに違いない。

  • 2003−5−13(火)の夕方
     長年の憧れだったピックアップトラックをついに購入!2001年式フォード・レンジャー。頑健な造りで定評のある車体に4000ccV6エンジンを積んで、加速もバリバリ。冬の積雪に備えてもちろん4WD。シルバーのボディが渋い!!
     昨日、大学院の後輩が一日付き合ってくれてディーラー巡りをして、4軒目でこれに巡り合った。粘りに粘った交渉の末、素晴らしい値引きをゲットして、ホクホク。

     昔の映画、「バック・トゥー・ザ・フューチャー」の最後の場面で、過去から現在に主人公が戻ってきたら、自分の境遇が変わっていて、自分用のトラックが車庫にあるのを見て「こいつはすげえや」と驚き喜ぶ場面があったと思うんだけど、それを見たときの僕は、「なぜトラック??」と思ったものだ。荷運びの仕事をするわけでもない高校生がどうしてトラックを欲しがるのだろう、と。
     しかし、アメリカに来て、僕もこっちの感覚に洗脳された。荷物を載せるわけでもないのに、あえてトラックに乗るカッコよさ!!もちろんアメリカ人も様々で、流線形のスポーツカーをカッコいいと思う人もいるけど、タフでマッチョなものを好む人々はピックアップに乗るのである。テキサスの水口くんに僕のこのピックアップへの憧れを話したら、「全然理解できないけど、テキサスにそういう人は多い」と言われた。実際、テキサス出身の後輩はピックアップに乗ってるなー。僕はテキサスに向いてるかも?

     あー、今はとにかく嬉しい。自分のトラックを眺めてはニヤニヤする日々がしばらくは続きそう。

  • 2003−5−16(金)の朝
     僕のトラック、買った翌日からいきなり、鈴虫の鳴くような音をエンジンのあたりから発し始めた。ディーラーに持って行って見てもらったら、この車種にはよくあることで、部品を交換すれば直るし、部品が届くまでの間も乗っていて何も危険なことはないとのこと。ふー。
     まだメーカー保証が効いてるので、その間は故障が起きても無償で直してもらえる。よかったよかった。

     そんなトラブルはあったけど、あとは快調そのもの。僕もだんだんこのあたりの道路に慣れてきた。ただ、車庫入れと縦列駐車はもっと練習しないと…。教習所時代はそういう小技は誰よりも得意だったのに、下手になってしまった。まあ、車体が大きいのと、運転席の位置が高いので、乗用車よりはどうしても難しいのだと思うが。

     うちの大学は駐車場難で、寮に住む学生の中には、自分の車のところまでバスに乗っていかなければならない人もいるらしいのだが、僕はTA特権で、キャンパス内のいろいろな便利な場所に停められる。今は僕の住む寮のすぐ脇、自室の窓から見えるところに停まっている。
    真ん中のやつ

     朝起きて、窓のブラインドを開けて自分のトラックを見て、またニヤニヤ。

  • 2003−5−18(日)の深夜
     「EITM」プログラムでセントルイスに行くまであと僅か2週間になった。ゲーム理論の復習・統計分析手法の復習・数学の復習・コンピューターソフト「R」の習得・などなど、それまでにしなければいけないことは山ほどあるのだが、まあ、全て完璧な状態で出発するのは無理だ。実際、他の参加者はどの程度の知識を持ってやってくるのだろう…?
     使えるようにならねばならないコンピュータソフトの「R」は、いろいろいじってるうちにだんだん分かってきた。「オブジェクト志向言語」なんていう言葉、聞いたことはあったけど、実際に自分が使うことになるとは思わなかった。あー、自分は本当に文系なんだろうか…。
     「EITM」プログラムのシラバスが送られてきたので、必要な本を買ったり、論文をWEBから印刷したりしているのだが、内容はかなり高度なようだ。う〜。

  • 2003−5−21(水)の夜
     微分積分の復習をしながら、「あー、今まで何回同じことをやり直したかなー」と天井を見上げた。やはりしばらく使わないと忘れるわけで、必要になる度にまた復習しなおす。その繰り返し。使わなくても定期的に見直すように習慣づければ、こんな繰り返しをする必要はなくなるんだろうか。どっちがいいのかなー。
     そして、今日はゲーム理論の復習を始めた。習ってから2年経つわけで、当時のノートを読み返してみると、覚えてることもあるし、全く記憶に無いこともある。今回参加するセミナーでは、「PBEとシグナリング程度までは知ってることを前提とする」とかいうことになっているのだが、ということは、2年前に習った範囲を知っていれば大丈夫そうだ。記憶に無いことではあっても、一度は習って理解した内容であれば、もう一度理解することはそんなに大変ではないだろう。

     あと今日は、愛車のナンバープレートが届いた。

     これまではナンバープレート無しで走っていたわけだが、ミシガン州の法律では、購入後15日間はナンバープレート無しで走行できるのである(何日までそれが有効か書いた用紙を車の後部に貼らなければならない)。ニューヨーク州出身の後輩の話では、ニューヨークではナンバープレート無しでは公道を走れないので、それが届くまではディーラーに車を置いたままにしたりするのだとのこと。つまり、僕がやったように即日ディーラーから乗って帰るわけにはいかないらしい。州ごとにいろいろ違って面白い。

  • 2003−5−23(金)の午後
     昨日は視力検査に行ってきた($50もかかった!)。初めて眼鏡を作ったときからもう2年半が経つので、もしも視力が更に悪化しているなら眼鏡を作りかえなければならないかと思って。
     自分では更に目が悪くなってるような気がしていたのだが、結果は前回と同じ、右は「-1.00」、左が「-1.25」。乱視の程度はちょっと進んでしまったそうだが、医師によると、今の眼鏡を使い続けても問題ないとのこと。眼鏡を買い替えることになったら痛い出費だったので、よかった。(トラック購入と関連費用のため、厳しい財政事情のもとで生きる僕。)

  • 2003−5−26(月)の夜 【34万アクセス到達しました】
     今度の秋学期に何のクラスを教えるか、それが僕の大きな関心事である。春学期に引き続き「比較政治学入門」を教えられれば、講義ノートを使いまわせるから非常に楽になるので、それを期待していた。
     しかし、学部のほうから「アジアの政治」を教える気はあるかと訊いてきた。ギョエッ!と思った。また新しいクラスの準備をするとなると、またそっちに莫大な時間を取られて、博士論文が進められない。しかも、今度は入門レベルではなく、学部3〜4年生が主な対象となっているので、ある程度は高度な内容を扱わねばならない。
     指導教授にメールで相談したら、やったらいいと勧められた。いい経験になる(就職活動のときに有利になる)し、学生の数も少ないだろうし、と。「あまり時間を取られ過ぎずにすむように授業をデザインする方法を教えてやるぞ」とも。そうかーー。
     いろいろ考えてみて、だんだん「アジアの政治」を教える気になってきた。僕は研究関心は一般理論にあるのだが、やはり一つどこかの地域に詳しくなっておけば、研究上も、就職活動でも、有利だろう。自分が日本人であることからも、特化する地域としてはアジアが妥当だ。関心もあるし。
     それなら、「アジアの政治」を教えた経験を持つことは、就職先探しのときに「売り」にできるし、その講義の準備を通じて自分自身も学べる。
     そんなわけで、今日の夕方、図書館で本を13冊も借り出してきた。早いうちに教科書を選ばねばならないし、テストを何回するか、ペーパーを課すか、などいろいろ決めねばならない。

  • 2003−5−28(水)の深夜
     今日は、友達を迎えにデトロイト空港までトラックで往復してきた。片道1時間半の道のり。もう高速道路の運転にも慣れた感じだ。僕の実家のあたりは、道路といえば片側一車線!という田舎なので、どうも僕は車線変更は苦手である。でも、だんだん慣れてきた。
     帰り道、デトロイト近郊にある日系のスーパーに寄って日本の食べ物などを買い物。4合瓶で30ドルもする「純米大吟醸・越乃冬雪花」という日本酒を購入。セントルイスでは同じプログラムに参加する人々と同じ宿泊施設に滞在するので、夜の自由時間とかにクラスメート達に飲ませてやろう。「淡麗辛口」と書いてあるので、僕の好きな味ではなさそうだが、アメリカ人の口にはむしろ合うと思う。(僕は淡麗よりもコクのある強い味が好き)

     そのセントルイスまでは、片道約8時間の道のりらしい。だから1日でも行けるだろうが、長距離運転に慣れていない僕は安全策をとって、2日計画で行く。土曜日に出発して、どこかのモーテルで一泊して、日曜の昼頃に着く感じで。1人で2時間以上運転するのは生まれて初めてである。しゃべって気を紛らす相手もいないし、ナビもしてもらえないし、う〜ん…。
     どうか事故りませんように…。

  • 2003−5−29(木)の午後
     今日は僕の誕生日。29歳になった。毎年この時期は日本に帰っていたので、アメリカで誕生日を迎えるのは実は初めてである。
     でも、今日は朝からずっといろいろな用事でバタバタしていた。セントルイス出発を明後日に控えて、煩雑な用事がやたらに押し寄せてきて、僕の研究室の机の上は雪崩のような状態になっている。
     秋学期に「アジアの政治」を教えることが正式に決定したのだが、教科書を選ぶのに苦労している。いろいろ探しているのだが、ちょうどいい感じの本がない。「比較政治学入門」だったら、それ用の教科書はたくさん出版されているのだが、「アジアの政治」となると、需要も少ないのだろう(「東南アジアの政治」とか「中国の政治」とか用の本はいろいろある)。これも出発前に目星をつけておきたいのだが…。

     なんだかもう、片付けねばならない様々な用事が重なってくるので、頭の容量を越えそうだ。ちゃんと土曜日に出発できるのだろうか…?
     でも、今夜はやはり飲む予定。誕生日の夜くらいはね!

  • 2003−5−30(金)の夜
     さて、いよいよ明日の午前中にセントルイスへ出発。出発準備でバタバタしていたため、到着前に読んでいかねばならない文献がほとんど読めていない。どうなることやら…。だいたい、その文献の量が尋常じゃないので、本を図書館で借りたり、論文をコピー/プリントするだけでも相当の時間がかかった。図書館間貸借で手に入れたモノもあるし。僕はクルマで行くからいいけど、飛行機で到着する人は、あの文献の山をスーツケースなどに入れて持参するのだろうか??大変なことだ…。
     一ヶ月も滞在するとなると、持っていきたいモノがいろいろあって、なかなか荷物がまとまらない。今、僕の寮の部屋は文字通り足の踏み場もない状態。むこうの気候はどんな感じかなーー。

     と言う訳で、行って来ます。向こうでのネット環境がどうなるか分からないので、来月は更新できないかもしれません。


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