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留学記「大学院をミシガンで」

1999年8月 > 9月


  • 99−8−12(木)
     成田から11時間ちょっとの飛行でデトロイト到着。入国審査の後、国内線に乗り換えてランシング空港へ。ボランティアの学生が迎えに来てくれて、彼の車で大学へ向かった。たいして暑くない。日本で酷暑に苦しんでいたので、けっこう嬉しい。
     これから21日までは、ティーチングアシスタントをする留学生のための研修プログラムに参加する。住むところも用意してもらえて、中国から来た沈源君と同室になった。僕と同じ74年生まれで、機械工学専攻だそうだ。6月に結婚したとのこと。奥さんはシンガポールに留学しているそうだ。
     時差のせいで眠い。日本では深夜だ。こっちの時間に慣れるためには、夜まで寝ないで我慢するほうがいいと思って、さっそくいろいろな手続きをしに出かけた。留学生担当のオフィスやら自分の研究科やら、行かねばならないところはたくさんある。
     夕方になって、夕飯を食いに出ようかと思ったが、雨が降り出して、しかも眠いばかりで食欲がたいしてないので、食わないでこのまま寝ることにした。一晩くらい食わなくても死なねえさ。8:00就寝で、グッスリ。

  • 99−8−13(金)
     昨夜8時から寝てるので、当然早く目が覚めた。沈源君も早く起きたので、6時ころからいろいろ話してた。事務手続きをしに行ったり、ショッピングモールに買い物に行ったりした。

  • 99−8−15(日)
     今日から、留学生のティーチングアシスタント(ITA=International Teaching Assistant)の研修プログラムが始まった。今年の参加者は150人ほどだという。ITAは、学期中にアシスタントの仕事をするかわりに、授業料が大幅に免除になり、給料がもらえ、さらに医療保険も大学もちになる。人数が多いので、この研修のためのスタッフの数もかなりのものだし、研修の資料、その間のわれわれの食費など、大学にはかなりの出費のはずだ。プログラムではアメリカの教育制度の紹介から始まって、英語を母国語としない人が英語で教えるための技術まで指導される。なんとも整ったシステムである。もしも留学生のかわりにアメリカ人をTAに雇えば、この研修の必要もなく、かなりの経費削減になるのだろうが、わざわざこうしてわれわれを雇ってくれるのだ。ITAで来ている大学院生のなかには、この制度がなければアメリカに来られなかった人も多いことだろう。大金を払っても海外の若者を集める、この太っ腹がアメリカの強さを支えているのだろう。

  • 99−8−18(水)
     「SPEAK」というテストを受けた。英語を話す能力を測るものだが、結果はボロクソ・・・。一つの項目について45秒とか60秒も話さねばならないだが、これが非常に難しい。普段の日常会話ならば、自分の一回の発言は5秒とか、長くて10秒くらいのものだから、このテストは会話とは全く異なって、「英語でスピーチ」する能力が要るようだ。さて、果たして合格点は取れるだろうか・・・。

  • 99−8−21(土)
     今日でITAオリエンテーションが修了。修了証書をもらった。最後の2日間には、各人のプレゼンテーションをビデオに録画してそれを見て検討する時間まであり、かなりしっかりと組み立てられた研修だったと思う。実際、ここで養成したTAに学部生の教育の多くの部分を委ねるわけだから、大学側としても真剣になるのだろう。
     夕食のあと、ITA研修に用意されてた寮を出て、自分本来の寮に移った。こっちは個室。狭い狭いと聞いてたわりにはけっこうな部屋で、6畳くらいはあるだろう。収納スペースも十分。大学院生用の寮だけあって、机の横に4段の本棚がついている。気に入った!

  • 99−8−22(日)
     日曜日。クルマを持ってるHさんに買い物に連れてってもらって、冷蔵庫・レンジ・炊飯器などを購入。さらに、アジアの食品を売ってる店で、納豆・キムチ・ふりかけ・レトルトカレーなどをゲット。ビールも24缶セットでまとめ買いして、快適な生活環境が着々と整いつつある。
     夜、シャワーのあとで、10日ぶりのビールをゴクリ。・・たまらん。(ちなみに、アメリカのビールはまずいけど、カナダのビールはけっこういける。モルソンとかラバットとか。今日買ってきたのはラバットブルー。)

  • 99−8−23(月)
     朝、米を炊いて、納豆御飯。やはり和食は力が沸く気がする。前回の留学ではいつも食堂で食べてて、かなり不満が溜まったが、今回は朝飯だけ自分でするつもり。といってもおかずを作る気はさらさらないけど。

  • 99−8−25(水)
     図書館を探検。朝日新聞の国際衛星版があって、しばらく読み耽った。この図書館はかなりすごい。新聞コーナーにはアフリカの小国の新聞までたくさん入ってるし、本やジャーナルもかなりのコレクションだ。さらに、CD−ROMのデータベースを、館内でインターネットにつながってる全ての端末から検索できるしくみ。感激!

  • 99−8−26(木)
     政治学PhDコースの初の(そして一回だけの)オリエンテーション。参加した新入生はわずか5人。ほかに2〜3人いるとのことだけど、それでも新入生は7〜8人だ。すごい小人数体制で、けっこう嬉しい。この連中とこれから数年間苦楽をともにしてゆくのだ。
     受講科目が決まったので、教科書を買い揃えた。今学期に履修する3科目で指定された教科書は、なんと計14冊!積み上げたら30cmになった。

  • 99−8−27(金)
     野球観戦!・・といっても大リーグではなくて、大リーグの下の下の下、「A」というリーグのチームが地元(隣り街)にあるのだ。チーム名は「ランシング・ラグナッツ」。ラグナッツとは、クルマのホイールを車体にとめる大きなボルトのことで、自動車の街らしい命名。今日の相手は「サウスベンド・シルバーホークス」。$5.50払って球場に入ると、あちこちにホットドッグやポップコーンを売るスタンドがあって、さらには鉄板でジュージューとバーベキューをやってる店まであり、なんだか楽しくなってきた。底抜けに明るい。さっそくビールとホットドッグを買って、さらにはラグナッツ帽子($11)まで買ってしまった。夏時間のために夕方でもまだ日は高いし、グラウンドは天然芝だ。気持ちいい!!
     スタンドの観客はもちろん地元のラグナッツファン一色だ。客層は日本とちょっと異なって、日本よりも家族連れが多いようだ。60過ぎの老夫婦がなかよく野球観戦しているし、さらに、まったく他人の老夫婦同士が仲良くなって談笑している。応援団が終始ラッパを吹き続ける日本とは違って、ここはもっとリラックスして観戦を楽しんでいる。たくさんの家族と一緒にピクニックに来たかのような感じ。アメリカの暗い側面(銃とか麻薬とか)が日本ではよくクローズアップされるが、それとは全く無縁の、明るく楽しく単純なアメリカがここにあった。
     試合は4−3でラグナッツの勝利。後味もよかった。

  • 99−8−29(日)
     いよいよ明日から授業開始(ちなみに、入学式というものは存在しない)。気合を入れて一日中予習していた。夜、寮のフロア別の交流会があって、ピザを食べながら同フロアの学生たちと歓談した。

  • 99−8−30(月)
     新学期のスタート。午後1時から政治学研究科の歓迎会があって、教授陣や上級生に会った。3時から"Proseminar in Comparative Politics"、5時から"Proseminar in Political Theory and Research Methods"の2コマ(1コマは1時間20分。各コース週に2コマあって、それを一学期間やって3単位)。学生の数が、前者は5人、後者は7人と、すばらしい小人数教育だ。
     今日は一日目なので、どちらのクラスでも今後の日程や評価基準などの説明があった。課題を見て思ったことは、読まなければならない文献の量もさることながら、「批判的に」読むことが重視されているということ。鵜呑みにするのではなく、その本や論文の長所・短所を考えながら読み、それに対する自分の意見を持つことが要求される。
     これはアメリカの教育の特徴なのかもしれない。前回の留学のときにもこういうことがあった。作文のクラスの教科書に、「悪文」(論旨がブレていたり、構成がまとまってなかったり)が「悪い例」とは示されずに載っていて、授業のなかでその文の問題点を話し合うようになっていた。また、数年前のそのクラスの学生が書いたエッセイを読んで、長所と短所を指摘するという課題もあった。
     日本の大学で作文の授業を受けたことはないが、少なくとも小学校から高校までの作文の時間にはその種の教育はなかった。思い出すのは、「良い例」に学んだことのみである。日本の大学で受けた政治学その他の授業でも、ここまで「批判的な読書」が強調されていた覚えはない。
     まあ、日本の大学の授業でも、自分がいい加減にやっていたから分からなかっただけで実はそれが重視されていたのかもしれないし、日本で大学院に行ったこともないので、軽はずみな比較と一般化はできないけれども、とりあえず、今日の感想として。

  • 99−8−31(火)
     今日は"Quantitative Techniques in Public Policy and Political Science I"の授業があり、また、自分がTA(ティーチングアシスタント)をする学部生の授業もあった。そこでは出席をとったりテストの成績を記録したりする仕事をすることになった。学生が75人もいるので、事務的なことはTAが受け持ち、教授は講義に専念するという仕組み。そのかわり、こっちには大学から給料がでる。仕事はけっこう楽そうで、一安心。ただ、もう1科目TAがあるので、そっちはわからないけど。


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