綺麗になったニューヨーク

 四月の終わりから五月にかけてはゴールデンウィークとやらで日本から観光客がどっと押し寄せニューヨークの五番街やタイムズスクエアあたりは買い物袋を抱えた日本人観光客がワンサカ歩いているものだが、今年は様子が違ったようだ。日本は不景気の風が吹き荒れ庶民の財布の紐は急に堅くなり、円安が進み買い物のメリットも少なくなると途端に買い物欲も失せてしまう。今年は近場の海外で済ませてしまおうということで、ニューヨークまで足を伸ばす人は減ってしまったようである。不景気の波はニューヨーク日本人社会にも押し寄せている。日系各社は支社を縮小したり、閉めたりして対応している。聞くところによると接待なども派手には行えなくなってきて日系のナイトクラブやレストランなども打撃を受けているそうだ。

 円高の頃はおそらく日本から来た人にとって何を買っても安く感じたであろう。ところがこのところの円安ドル高傾向で日米の物価の格差が一気に縮まった。いや、やっと同等になったと言いたい。身の回りの生活用品はたいがいのものはアメリカのもので済む。しかし、日本人であるからどうしても欲しい日本のものもある。書籍や食品、コンピュータのソフトなど日本から輸入に頼らざるを得ないものの中には高い金を払ってでも手に入れたいものが有る。そういったものが今後も今の状態で為替が安定すれば手ごろな値段で手に入れることができる。アメリカに住む日本人のとってこれは大変に喜ばしいことなのである。

 アメリカは好景気だという。自分の周辺でも家屋の建設がいたるところで進んでいる。ショッピングセンターへ行けば買い物客でごった返している。マンハッタンではビルの建設があちこちで行われ、空きビルもあまり見なくなった。街はどんどん変わりつつある。ニューヨークの町は汚いというイメージがあったのはもう昔の話である。悪名高き地下鉄は数年前から落書きはすべて消え駅も改修が進みずいぶんと明るくなった。42丁目はかつてはポルノショップ街で浮浪者、ちんぴら、麻薬売りなどがうろうろしていたがそれらが半ば強制的に一掃され、新しくディズニーの劇場とお土産屋が開店したのを皮切りに新しい劇場の建設が進んでおり見違えるようだ。イーストビレッジのファーストアヴェニューより東側はアルファベットアベニュー(アべニューA、アベニューB、…と続く)と呼ばれあまり普通の人は足を踏み入れなかったが、今ではしゃれたレストランの立ち並ぶ小奇麗な街に変身してしまった。ハーレムだって決して危ないところではない。さすがにここは黒人の街なので一種異様なムードは有るが明るく陽気なこの街の人々はとてもフレンドリーに迎えてくれる。ソウルフードを食べジャズやゴスペルを聞けばすぐにこの街に溶け込める。

 6月の中旬から下旬にかけて恒例のJVCジャズフェスティバルが行われる。この時期はニューヨークのジャズが一番ホットになる時である。ジャズクラブに出演する顔触れも普段にも増してグレートな人たちが目白押し。ジャズファンならこの機会を見逃す手はない。今、綺麗になったニューヨークに足を運ぶのも悪くない。(5/30/98)


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