アメリカから見た長野オリンピック
二週間にわたる冬のスポーツの祭典をアメリカからも十分楽しませてもらった。おそらく諸外国の人々には殆ど馴染みのなかった「ナガノ」の地名は多くの人に知られることとなったであろう。夏のオリンピックが大都市で開催されるのと違い冬季オリンピックの場合は小都市の場合が多い。数回前の冬季オリンピックの行われたニューヨーク州レークプラシッドにスキーに行ったことがあるがあまりに小さな町に驚いた。一般に開放されているスキー場やスケート場などはよいが今は使われていないジャンプ台がそのまま放置されている姿を見ると寂しさを感じる。小都市なだけに経済的にも施設の維持が難しく放置されたままになっているという話はよく聞く。無理して開いたはよいが後に負担が残るというオリンピックの在り方自体に問題も多い。またサラエボのように平和の祭典が行われた場所が戦火にさらされるなどは実に悲しい話である。
開催前、「ナガノ」の発音は「ガ」にアクセントが有った。アメリカ人が普通に発音するとたいがいそうなる。しかし、実際の発音に近くという申し合わせが有ったのだろう、「ナ」にアクセントを置いた発音に変わった。アルペン競技の行われた白馬は私も高校の頃スキーに行ったりしたこともあり懐かしい地名だがこの「白馬」の発音がどうしても「ハカバ」に聞こえてしまうのには苦笑してしまった。
開会式は私的には失望した。民族意識を強調した演出にはくどさを感じ、小沢征爾指揮による「喜びの歌」も長すぎる感が有った。こちらの放送では途中でCMが入ってしまった。聖火が会場に入場したところはなかなか感動的であったが、聖火台へ駆け上る女子マラソン選手の姿のアンバランスさにがっかりし、さらに聖火台への点灯者の伊藤みどりの登場に愕然とした。安物の怪獣映画のノリだ。ああ、なんてショーの下手な国民なのだろう。ところが賛否両論あるもので素晴らしかったという声も多く聞かれたので私的な意見に留めておく。
良かったこともある。貴乃花の代役ではあったが土俵入りを勤めたハワイ出身の曙が開会式前、インタビューに上手な英語(当たり前か)で答える姿はアメリカ人に好感をもたれたのではないだろうか。またアメリカ向けの放送なので随所に長野の紹介、文化の違いなどを解説する場面がありアメリカ人から見た日本を垣間見ることができ興味深かった。
日本選手の予想以上の活躍のせいか開催国に敬意を表してか今回は日本選手の姿を多く見られたような気がする。とくにスピードスケートの清水選手はスポーツ選手らしからぬあの小さな身体での金メダルだけに大きく取り上げられていた。アメリカは前半なかなかメダルが取れずマスコミは比較的クールでその分他国の選手にスポットが当たるチャンスが増えたのかもしれない。
アメリカの最大関心事はアイスホッケーであった。今回のオリンピックで金メダルを取るべく全員プロのホッケーリーグ(NHL)の選手を送り込んだのである。レギュラーシーズンが行われている最中であるにもかかわらず二週間のオリンピックブレークを設けての参戦である。もちろんカナダ、チェコ、ロシア、フィンランド等強豪チームにもNHLの選手が参加しているが全員がプロというのはアメリカだけである。それだけに金メダル必至であったはずが思うように勝ち星を上げられず、メダルはおろか準々決勝で敗退という始末。おまけに怒った選手が腹いせに選手村の器物を壊す不祥事まで起こしてしまった。 本来、アマチュアスポーツの祭典であるはずのオリンピックに年間何億、何十億円を稼ぐプロの選手が参加するのはどうも納得がいかない。方や帰りの輸送費を節約するためにボブスレーを売った国があったりスラップスケートは高くて買えないので普通のスケート靴を使っている国があるという話を聞くと弱者を応援したくなる。
また、カナダのスノーボード選手のマリファナ問題で一旦剥奪した金メダルをもとに戻したのも納得がいかない。オリンピック委員会が決めたことで日本とは直接関係のないことなのかもしれないが、あれだけ麻薬に厳しい日本の中でこういう結論が出されたことに割切れ無さを感じる。
ともあれ毎日のように見ていた今回のオリンピックだが、その中で最も印象に残ったのは毎回テレビ番組の前後に映し出される日本アルプスの美しさであった事を付け加えておく。(3/1/98)