女性ジャズミュージシャンの活躍

 当然といえば当然の話なのだがアメリカで生活していると「日本と違うな〜」と感じることがよくがある。例えば路を譲るという行為。ドアの入り口で見ず知らずの人と出くわした場合、必ずと言っていいほど「どうぞお先に」というジェスチャーで先に行くよう促される。私が同じ立場で人に路を譲った場合でも相手はたいがい素直に譲られる。レディーファーストの国なので相手が女性の場合はエチケットとして100%女性が先だ。これが日本だとどうだろう。同じ状況で路を譲ろうとするとおおかたは遠慮される。それでもどうぞと促すと、非常に申し訳なさそうにペコペコおじぎしながら去って行く。相手が女性の場合は一瞬、困惑とも警戒ともとれる反応を見せることがある。これでは譲った方も余りよい気分はしないので面倒くさいから止めてしまった経験がある。

 レディーファーストという行為は実に徹底されている。前述の路を譲るとき、レストランなどで着席する順番、メニューを渡されるのもワインをつがれるのも女性が先。女性を労るということが習慣として社会に根付いている。アメリカにおいてはこのレディーファーストが社会への女性進出の面においてプラスになっているように感じる。実力社会のアメリカであるから成功するか否かは本人の実力次第だが、とりあえず「どうぞお先に」と自分を発揮するチャンスがめぐってくる。あとはチャンスを生かすも殺すも本人の努力如何。ここから先はアメリカでも女だからといって決して甘くは見てくれない。

 ジャズミュージックの世界でも多くの女性が活躍している。ボーカルやピアノは昔からいたが今ではすべての楽器に一流のプレーヤーがいると言ってもいい。ジャズの世界は職人芸的な実力の世界であるから人々は演奏の評価を容姿や性別や年令に左右されることはほとんどない。だから女性プレーヤーは本当に実力だけで勝負している。ドラムやベース、トロンボーンやトランペットにも男顔負けのパワフルなプレーヤーが沢山いる。女性だけのビッグバンドもあるが決して見せ物的な物ではなく一流の演奏を聴かせてくれるのである。トロンボーン、トランペットなどの金管楽器は女性には敬遠されがちと思われるかもしれないがハイスクールなどのマーチングバンドには女性奏者も沢山いて違和感なく楽器を手にする機会が多いようだ。街にはジャズが溢れているのでジャズを好きになる機会も多い。そうして自然と女性ジャズ奏者が育っていく。セッションなどで意気のいいハイノートのトランペットが聞こえてくるなーと思ったら黒人の若い女性だったり、すらっとスタイルの良い美形の白人女性がトランペットを吹き始めたら柔らかい音色で流れるような旋律のアドリブで度肝を抜かされたりと、身の回りであった経験を数え上げてもきりがないほど素晴らしいプレイヤーを見てきた。この女性プレイヤーの活躍も「日本と違うな〜」と感じることの一つである。

 現在、マンハッタンでは毎週月曜日、二人の女性ビッグバンドリーダーの活躍を見ることが出来る。BIRDLAND(バードランド)では日本の誇る名ジャズピアニスト秋吉敏子が夫君のルー・タバキン(テナーサックス)と共にビッグバンドを率いて演奏している。もう一方はVISIONES(ビジョネス)でコンポーザー、アレンジャーのマリア・シュナイダー率いるビッグバンドでこちらも若い才能ある演奏家を擁した素晴らしいバンドと評判である。(3/7/97)



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